城
               
               
測量をする男Aは、毎夜、不眠に悩まされており、眠り薬を飲むほどであった。何かが、Aの睡眠を妨げるのだ。
Aは機会があって、眠り薬を飲むのを辞めた。「朝まで起きていてもいいではないか」と、Aは半ば、あきらめ気分で薬を飲まず、じっとベッドに横になった。

当然、Aは、なかなか寝付けないが、なんとか夢の中に入ったらしい。そのAの夢の中で「城」が出て来る。移動要塞のような、また、巨大なバリケードのような「城」が出て来る。Aは夢の中で、城を思い浮かべる度に、何かの恐怖を感じるのだ。
人は「城」のイメージを思い浮かべると、何かの威圧感を感じる。城を思い浮かべる度に、Aはその威圧感と恐怖感を感じるのだ。しかも、Aは夢の中で、その城の様子を何度も、物語に書きとめようとしているのだ。

威圧感や恐怖感を感じるぐらいならば、Aはその城のことを物語に書かない方が良いだろうが、それでも、Aは自分の物語の中に、その城の様子を書き取ろうとしているのだ。

やがて、Aは気付くのだ。その城の恐怖感が自分の眠りを妨げているのだ、と。Aの夢の中で。つまり、その恐怖を感じる姿こそ、Aの心なのだ。また、Aは夢の中で気付くのだ。その恐怖を感じる姿こそ、人類そのものだと。つまり、Aや人類自身が周囲の敵に対して、自ら、恐ろしいバリケードを心の中に築いている。

Aは安眠するために、その城を壊そうと試み始めた。しかし、Aにとって、城は恐怖の象徴だ。Aは何度もその城を壊そうとするが、恐怖感によって、なかなか、その城を壊せないでいる。

その時、「もう、その巨大で周囲の人々を威圧する城を壊して良い」と誰かの声がした。
その声によって、やっと、Aは、うつらうつらした夢から覚めた。

                            2011年2月22日

                坂本 誠

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