長崎

                                        聖母にPhoto
                                       
屋内の人々が  心を清めている。
組み合わされた両の掌。
そこから  一つの線が  天に向かって
羽ばたき  飛び立っている。
それらの多くの線を
街の上に立つ
巨大な女性が
胸で受け止めている。

洋風の館から  流れ出す気。
カステラの味が  宙に漂っているかのよう。
孔子の廟から  線香の匂いが流れている。
北京ダックの味が  舌をかすめる。
社(やしろ)の中で龍が踊って遊んでいる。
龍の動きの線が  社の外に流れ出す。

西洋から来た時と
中華から来た時と
日本から来た時が  流れている。
何本かの時が  交錯し続けて
大和(やまと)している。

おわんのような大地に
夜  家々の放つ  光が共鳴し合い
何本もの時が行きかう様を
街の上から
巨大な女性が  静かな笑みを浮かべて
見守っている。

かつて
その女性は
やさしさ故にか  甘んじて
プルトニウムの臭いも嗅いだ。

しかし
プルトニウムの臭いは
人々の心までも
毒することは出来なかった。

今、幾つもの笑顔が  行きかい
混じり合う様を
彼女は  静かに  見ている。


                                        坂本誠